ターミナルケアについて 5
死の受容の姿はまさしく、その人が最期の生をどう生きるかということを示す姿ともいえましょう。
患者の死の受容の仕方は、基本的にはその人の人生観にかかっています。
しかし、現実には多くの因子は、死にゆく者をみとる医師、看護師、家族、友人の、患者へのアプローチによって左右されるものと思われます。
がんの場合、それが進行してからだの諸所に転移し、科学療法や免疫療法、放射線療法などが無効となったときは、患者の多くは、その治療法をとおして自分が悪性腫瘍にかかっていることを感知することが多いようです。
しかし、医師に単刀直入に自分の診断をきくという勇気をもつ患者はひじょうに少ないように思われます。
たいていの患者は、看護師や家人と取引きして真実を知ろうとしますが、衰弱がひどくなると、何も考えず、運を天にまかせた気持ちで、漠然とした、不安な日々をすごします。
その場合、がんによる痛みがひどいときは、なんとか痛みをとめてほしいと祈念する心が大きいのは当然です。
痛みのなかで人生を考えたり、家族との訣別の会話をすることはひじょうに困難なことです。
日本では、患者へのがんの告知は、多くの場合当人の強い意向がない限り、本人よりむしろ家族の意向で決められます。
家人の多くは、治らないがんとなれば、それを患者に知らせて落胆させることはないと考えます。